L'EMPEREUR DE LA MODE

Saint Laurentは1961年に“モード界の帝王”と呼ばれた20世紀を代表するデザイナー、イヴ・サンローランにより設立されたブランドだ。プレタポルテラインを展開した元祖ブランドとして知られ、現在のようにデザイナーズブランドが万人に開かれる礎を築いた。
2012年に極端に細いシルエットや少年性を持つ一貫したロックテイストスキニールックを提案したエディ・スリマンがクリエイティブディレクターに就任したことで、再び脚光を浴びた。
設立当初から一貫してクラシックでエレガントな作品を発表し続けている。

BRAND

ブランドを設立したイヴ・サンローランは学生の頃から才能を発揮し、1954年にクリスチャン・ディオールに後継者として師事した。3年後にクリスチャン・ディオールが急逝し、21歳という異例の若さでディオールの主任デザイナーに就任。
周囲のプレッシャーとは裏腹に「トラペーズライン」という台形型のドレスを発表し、多くの若者の支持を得て、一気に注目を浴びた。当時の新聞の見出しでは「イヴ・サンローランはフランスを救った。偉大なるディオールの伝統は続きます。」という称賛を得たほどであった。

1961年に自身の名を冠するオートクチュールメゾンYves Saint Laurentを設立し、続く1966年にプレタポルテラインであるYves Saint Laurent rive gaucheを立ち上げ、現在のブランドの原型が誕生した。
イヴ・サンローランがファッション史に残した功績は多く、1965年発表のアートとファッションを融合した「モンドリアンルック」、従来の女性像から女性を開放したと言われる「スモーキング」、「シースルースタイル」、更には民族衣装を取り入れた「アフリカンコレクション」などがあり、現在では当たり前とされる多くの基礎を築き上げた。また、ランウェイに有色人種モデルを起用した最初のブランドであることも有名で計り知れない影響を後に与えた。
1985年にはフランスの最高勲章レジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受賞し、この頃より“モード界の帝王”と位置づけられ20世紀を代表するデザイナーへ上り詰めた。

2002年にイヴ・サンローラン本人は引退を発表しオートクチュールラインは後継者が見つからず、彼の引退をもって閉鎖することになった。
一方、プレタポルテラインであるリヴ・ゴーシュのデザイナーには2001年からGucciを再生させたトム・フォード、そして2005年-2012年までステファノ・ピラーティが勤めあげた。

2012年にエディ・スリマンがクリエイティブディレクターに就任し、ブランド名をSaint Laurent Parisに改名し、さらに原点に立ち返るという意味合いで創業当時のフォントを使用しロゴを刷新した。
ロックを感じさせるようなスキニースタイルは一大ムーブメントを巻き起こした。
2016年にアンソニー ・ヴァカレロが後任デザイナーに就任し、ロックテイストを踏襲しながら独自のラグジュアリー路線を融合させ人気を博している。

世界共通の
ラグジュアリー記号

一度見たら強烈に記憶に残るSaint Laurentが持つカサンドラロゴ。
このロゴがどこのブランドか知らないがロゴ自体は見たことがあるという方も多いだろう。
往々にして、ブランドの魅力を語る際に作風などを語るケースが多いのだがSaint Laurentにはこのロゴの魅力を語れずにはいられないのだ。

元々、このY,S,Lが重なり合ったカサンドラロゴはフランスのとあるグラフィックデザイナーよって作成された。
彼の持つデザイン上のペンネームがA.M.CASSANDREであったことから、“カサンドラ”と名付けられた。
彼は「単一の視点ではなく、複数の視点から見たイメージを集約し表現」するキュビズムという技法でこの印象的なロゴを作成したという。
よく優れたロゴはブランドをうまく表現しているといわれる。
ここからは憶測だが、このロゴはまさにブランドが辿った歴史をそのまま映しているように思えてならない。
従来タブー視されている事象や存在しなかった概念など幅広い領域でファッションの可能性を広げていったイヴ・サンローラン。
現在では当たり前とされる多くの基礎を築き上げていった。
どの分野においても根底にはSaint Laurentが存在している。
これはカサンドラロゴが持つ意味合いと符合するのではないか。

複数の視点から見てもSaint Laurentは万人が認めるラグジュアリーブランドなのだと感じるのである。
近年のロゴブームとは一線を画す意味合いをロゴに込められたブランドは他に無いように思える。

時代の空気感に
一致したスタイル

2つ目の魅力は現在のブランドのアイデンティティとも呼ぶべき“スキニースタイル”だ。
このスタイルは2012年にクリエイティブディレクターに就任したエディ・スリマンが定着させた。就任前のディオールオム時代に発表し、世間の価値観を大きく一変させたことは有名だ。
彼は幼少期より自身の細身な体系をコンプレックスにしていたという。
当時のデイビッド・ボウイやミック・ジャガーなどの名だたる細身なロックミュージシャンに憧れ、音楽を通じファッションに傾倒していった経緯が彼のスタイルを作っていった。

カール・ラガーフェルドがその細身のスーツを着るために40kgダイエットしたという逸話は有名であるが、なぜこれほどまでに受け入れられたのだろうか。
それは単純なカッコよさも一理あるが、時代の空気感に見事に一致したことが要因のように思える。
元々細身の洋服は存在していたが、ここまでスキニーなスタイルは当時存在しなかった。
さらに、今でこそジェンダー間の垣根はなくなっていたが当時は男性が窮屈なほどに華奢な洋服を着ることが一般的ではなかった。しかし、このスタイルを発表すると瞬く間に広まっていった。
イヴ・サンローランが女性を解放したと言うのであれば、エディ・スリマンは男性を解放したと言えるだろう。
世の中の男性たちはかっこいいから着たのではなく、ずっと着たいと思っていたから着たのである。
まさに世の中の空気感と完全に一致したのだ。
現在では後任デザイナーとしてアンソニー ・ヴァカレロが就任しているが、このスキニースタイルは色濃く残っている。

固定概念をことごとく塗り替え、ファッションシーンを変えてきたSaint Laurent。
スタートとして、カサンドラロゴが入ったデザインをおすすめしたい。
実際に身に付けて、魅力を存分に感じてほしい。