Maison Margiela

Nylon Shirt

デザイナーの想いを想像する

Maison Margiela(メゾンマルジェラ)からNylon Shirtの紹介だ。
よく考えられたシルエットのブラックシャツをベースに、挑発するかのように胸元のデニムポケットがアクセントになっている。
ステッチもオレンジであしらわれデニムだということが強く主張されている。
また、コートなどに採用されることが多いショルダーループ(肩章)が備わっており若干のミリタリーのニュアンスが顔をのぞかせる。
素材はポリアミドで、くしゃくしゃとした風合いが雰囲気を固くしすぎずに垢ぬけている。

一見様々な角度のデザインが多く足し算のように見えるシャツだが、マルジェラの仕事である。
どう解釈すればいいのかが分かれば、より一層愛着が増すことだろう。
“肩章”、“デニム”からアプローチしてみたいと思う。

厳格な統制と夢見る労働者

肩章はルイ15世時代のフランスで生まれ、元々は肩の防具に由来するとも考えられるエポーレットと呼ばれる派手なタイプが主流だった。
ショルダーループは特に機能性がより強く要求される兵・下士官用として広まり、その利便性から第二次世界大戦後は士官用もこのタイプを採用することが多くなった。
それが徐々に簡略化され、形骸化され、現在では衣服のアクセントや礼服に採用される程度となっている。
今回の服を見てみると、ショルダーループの先にアクセントとなっているメッキボタンのデザインは、恐らくフランス軍のデザインがベースであると思われる。
ただ、シルエットや構造は軍採用のシャツとは大きく異なるため、単なる軍ものの再解釈とは考えにくい。
となると、肩章が与える印象は、厳格な統制と階級制度だろうか。

一方、オレンジのステッチであしらわれたデニムと言えば、ゴールドラッシュ時期のアメリカ発祥である。
アメリカンドリームを求め金鉱へ集結した労働者の「丈夫な作業着がほしい」という要望により生まれた。
当時デニムに使用された真鍮製のリベットに合う色として、ステッチにはオレンジが採用され、現在までの定番となっている。
ゆえにデニムは夢見る労働者を連想させる生地となった。

相反する価値観の共存

ここから読み取れるのは、“規律”と“自由”だ。
厳格な規律の元に成り立つ軍隊と、自由と夢を求めた労働者の相反する価値観を1つのシャツに収めたものなのではないだろうか。

軍服のニュアンスとデニムのニュアンスを半々に詰めたものではなく、それぞれのアイコンを切り取って理解できるかできないかギリギリの要素で構成したミニマリズムは流石マルジェラである。

表向きは収まりのいいアクセントの効いたシャツであるが、ワインの瓶底に溜まる澱のようにかすかに感じる違和感を丁寧に汲み取ると見えてくる意図が面白い。

この解釈が正解かどうかはわからない。
ただ、デザイナーの想いを理解しようとすることこそ、服への愛着をより深める行為なのだと思っている。

Maison Margiela
Nylon Shirt
素材:ボディ:100% ナイロン トリム:100% コットン
生産国:イタリア