MM6

L/S Tee

普遍的なノスタルジアと
近代的なアンニュイさ

Maison Margiela(メゾンマルジェラ)のレディースライン MM6から、L/S T-SHIRTの紹介だ。
袖や裾のバイカラーによってレイヤードのように見える古典的な作りで、普遍的なノスタルジアを感じる。
にもかかわらず、ドロップショルダーや太い身幅だけではなく、袖丈まで相当なオーバーサイズで仕上げられている。
全体的に計算されたドレープで近代的なアンニュイさがよく表現されているように思える。

「ユニセックスっぽく着ることができそうだな。」
そう思った男性諸君に問う。
なぜユニセックスで着ることができると思ったのだろうか?

“エントリーラインとしてベーシックで定番なアイテムが多いので男性でも使いやすい”
“レディースラインなら周りと被らず個性が表現できる”
表面を舐めただけの有象無象のファッションメディアはこう答えるだろうが、本質は大きく異なる。

固定概念に疑問を持たせ
服への考え方を開放する

冒頭で述べたとおりMM6は「女性のための服」の独立ラインである。
Maison Margielaの本ラインと比べると比較的安価で、日常使いしやすいシンプルかつベーシックなデザインが多いというのは間違いない。
先述した男性着用についてだが、コーディネートアプリの「WEAR」を見てみると、驚くことにMM6投稿全体の20%が男性着用のコーディネートとなっている。
近年のジェンダーレスの文脈から考えるとそこまでおかしいことではないように感じるが、ユニセックスを狙ったラインではなくレディースラインだ。異例の数字である。
だが、これは世論の誘導による結果ではない。
多くの男性は直観的に「あ、自分も欲しいな。」と思ったから買ったのだろう。
その理由を考察すると、マルジェラの本質的な思想の中に答えがあると思われる。

マルジェラの服はタグの4隅がステッチで止められ内側から縫い付けられている。
これは「ブランドネームではなく服そのもので判断してもらいたい」という匿名性を意識したもので、マルジェラ自身も人物から服をイメージされないようほとんどメディアに素顔を出さなかったほどの徹底ぶりだ。
また、世に溢れる様々な物体を与えられた役割や用法から解放する「脱構築(デコンストラクション)」という概念をファッションに持ち込んだことでも有名だ。
※余談だが、メゾンがこの言葉を使ったことは無いらしい。

本来の用途や目的を破壊することで人々の思い込みや固定概念に疑問を持たせるとともに、“服”というものへの考え方を開放した最初のブランドだ。

この“匿名性”と“脱構築”の考え方をベースとして、MM6という“レディースライン”を作っているとしたらどうなるのか?

真の意味での“シンプル”

では改めてアイテムを見てみよう。
少年のようでもあり女性的でもある。
カジュアルでもありモードでもある。
保守的のようでもあり革新的でもある。
表裏一体のニュアンスを合わせ持ちながら、写し鏡のように受け手の感性によって表情を変える。
“レディースライン”ということすら脱構築しているように感じる。

これはよくある境界を曖昧にしただけの表現ではない。
多面的な主張をぶつけ互いを尊重する空気を出しているが、結局のところ何も言っていない虚無のような主張と大きく違う。
あれもありこれもありと言葉多く人を欺き中立を装った猥雑な自己表現ではなく、マルジェラの過不足を感じない中にも強い主張が存在する表現には、“無駄が無い”とはこのことかと痛感させられる。
これを人々は持ちうる言葉で言語化し「シンプル」と表現するのだろう。

真の意味で「シンプル」であることで、女性だけではなく感度の高い男性が手に取り着用する。
これこそマルジェラが意図した本当の衣服の扱われ方が成立していることの証だと思う。

男性諸君は、是非“レディースライン”のMM6を手に取ってみていただきたい。

MM6
L/S Tee
素材:コットン 生産国:Portugal