Ganryu

Kimono Coach Jacket

デザイナー渾身の相殺の美学

突然だが、事前知識無くこちらのジャケットを見て何を感じるだろうか。
まず目につく独自のシルエットと配色、そして和のテイストに加えてどことなく品格があるように見える。
明らかに他と一線を画すアイテムだということは共通して感じられることだろう。
恐らく多くの方はこのジャケットを見て和洋の“掛け算の美学”のようなものを感じられたかと思う。
だが、私はこのジャケットを見て“相殺の美学”だと思った。

FUMITO GANRYU(フミト ガンリュウ)の渾身のKimono Coach Jacketの紹介だ。

シンプルなデザインが多いコーチジャケットをベースに、袖部分は大胆に着物のデザインを採用。
伝統的な着物の袖を再現し、“振り”や“身八つ口”など着物の特徴的な部分まで作りこまれている。
生地は柔らかさと光沢のあるポリエステルで、裏地にキュプラを採用し肌当たりがいい。
外観は染め物を意識したような転写プリントが妖艶さを演出している。
全体的にワイドシルエットでゆったりした作りながら、腰に配置した帯でシルエットに締まりを与えている。

表層的なものと精神的なもの

デザイナーの丸龍文人は2004年に文化ファッション大学院大学を卒業後、日本の御三家の一つであるコム デ ギャルソン社にパタンナーとして入社をした。
渡辺淳弥の下で、ジュンヤワタナベ・コム デ ギャルソンのパタンナーを担当し、2008年にはコム デ ギャルソン社から自身の名を冠したブランド「GANRYU」をスタート。
コム デ ギャルソン社最年少デザイナーであった。
ギャルソンとしては珍しくストリートテイストを取り入れたGANRYUは人気を博し、10年続く人気ブランドとなった。
2016年末に同社を退社した丸龍は、1年の準備期間を経て2018年に「FUMITO GANRYU」として活動を再開した。
“21世紀に必要な服”をコンセプトに掲げたFUMITO GANRYUはニーズを的確に捉え瞬く間に人気を博した。
ギャルソン社で培ったフォルムとシルエットの美学を持ちつつ、GANRYUには見られなかったラグジュアリーさを演出する。

丸龍氏はラグジュアリーさを「“表層的なもの”と“精神的なもの”の2種類」と定義している。

前者はクオリティーの高い付属品など目に見える形で盛り込み、後者は目に見えないけれど心にゆとりを生むようなクリエイションとして盛り込んでいるという。

心のゆとりを生む
ニュートラルな一着

改めてこちらのコーチジャケットを見ていただきたい。
私が序章で語った“相殺の美学”はこの“心にゆとりを生むようなクリエイション”から来ているように感じる。
相殺というと打ち消し合うようなネガティブな言葉に感じられるかもしれないが、どちらともつかないニュートラルな状態だということである。
固定概念やあるべき論によりガチガチに縛られた哀しい現代人にとって、ニュートラルな衣服に身を包むことこそ心にゆとりを生むのではないだろうか。

世相に明るい丸龍氏が込めた、現代人への哀憐を表現するこの一着を是非手に取ってみていただきたい。

Ganryu
Kimono Coach Jacket メンズ コーチジャケット
素材:表地:ポリエステル100% / 裏地:キュプラ100%  生産国:日本