Givenchy

Spectre Low Runner BH003MH0NJ 100

先駆者が生み出した秀作

言わずと知れたGivenchy(ジバンシー)のSpectre Low Runnerの紹介だ。
ホワイトの上質なレザーのスニーカーにアクセントでヒートシール加工されたサイドファスナーがあしらわれている。
モノトーンで近未来的なデザインは、近年のモードストリートの流れを汲む秀逸な品だ。

ただ、ジバンシーのデザインは、近年の流行に影響を受けて変化したものではない。
むしろジバンシーがモードストリートの草分け的存在であることを知る者は少ないだろう。
今回はそのジバンシーのデザイン感について語りたい。

モードファッション
誕生の瞬間

ブランドの創始者であるHubert de Givenchy(ユーベル・ド・ジバンシー) は、フランスの首都パリから80キロメートルほどの古都、ボーヴェ出身。
ゴシック様式で統一された歴史的建築物が並ぶノスタルジックな都市であり、街を見下ろすサン・ピエール大聖堂(ボーヴェ大聖堂)が強い存在感を示す。
パリからほど近いこともあり、11世紀から続く繊維産業が盛んな地域だ。

ジバンシーは貴族の家庭生まれだ。
父は公爵の称号を持ち、母方の祖父は芸術家。
幼いころからレベルの高い芸術に触れ、8歳の頃には、母親のファッション誌に登場するモデルを参考にして、人形のための服を作っていたというエピソードが有名だ。
青年期になると、ジャック・ファス、エルザ・スキャパレリなど有名メゾンで修業を重ね、24歳のころ自身のメゾンを立ち上げた。
そして迎えたファーストコレクションにて上下を分ける「セパレート」や袖に備えられたフリルが特徴的なブラウス「ベッティーナ」を発表。
特にセパレートは、当時体型にぴったりと合わせてコルセットをきつく締めるニュールックが主流だった時代に革命を起こした。
シルエットはゆったりしているにも拘らず、ラグジュアリーさは失っていない。

私はファッション史の専門家というわけではないが、ジバンシーのファーストコレクションこそモードの真髄を捉えており、モードファッションの誕生の瞬間だと思っている。

その後、香水や美容品を扱うパルファム・ジバンシィも成功させ、ファッションデザイナーとしての枠を大きく超えた活躍を見せたジバンシーだが、1995年にメゾンから身を引き、伝説に幕を引くこととなった。

ジバンシー引退後の現在、2020年よりマシュー・ウィリアムズという30代のデザイナーがクリエイティブ・ディレクターを務めている。
マシューは年齢こそ若いが1017 ALYX 9SM(アリクス)を立ち上げた人物であり、現在のラグジュアリーストリートの潮流を作り上げた麒麟児である。

脈々と受け継がれる
真髄を感じる一足

改めてアイテムに目を向けてみよう。
直感的には近未来的なモノトーンのデザインで、正に今流行りのモードストリートという印象だ。
ただ、流行りのモードストリートと同じ目線で作られているか、と言われると違和感を覚える。
アイコン的な特殊なパーツやレイヤード、ギミックを搭載し安易にアイテムを表現しているわけではなく、計算されたシルエットと洗練されたデザイン。
ストリート源流のアイテムではなく、ラグジュアリーファッションから成るアイテムだということに気づかされる。
一見、麒麟児マシューによるラテラルな発想から生まれたアイテムのように見えて、そこに確かにジバンシーがいるのである。
脈々と受け継がれるジバンシーの真髄を感じることができるのは、これ以上ない喜びであると言えよう。

Givenchy
Spectre Low Runner BH003MH0NJ 100
素材:Leather