「chaos」と
「industrial」を具現化

JULIUSは2001年に堀川達郎によって立ち上げられたブランドだ。
デザインの主軸に「chaos」と「industrial」という2つの要素を置いている。
JULIUSに特徴的な捻じれや左右非対称性で「chaos」を、武骨で物質的な硬さを連想させるコーティングや素材使いで「industrial」を具現化している。
ブラックをクリエイションのベースとしており、ブラックは怒りと痛みのシンボルであり、日本の宗教にある禅的な意味合いや西洋におけるアンダーグラウンドなフェティシズム、光と対比する狂気的な闇への執着、すべての悲しみを弔う色として様々な意味を持たせていると語る。
モード、ストリート等の既存の枠に囚われない唯一無二の世界観から、日本のみならず海外からも熱狂的に支持を受けている。

4つの表現方法を持つ
アートプロジェクト

堀川達郎は元々グラフィックデザインを中心に活動し、1996年にサードストーンを設立した。
1997年に自身のファッションブランド「nuke(ヌーク)」を立ち上げた。
このブランドでは現在のJULIUSのような作風ではなく、行動を共にしていたクルーや敬愛するアーティストのためのユニフォーム等を手掛けていたと語る。
2001年に「服、映像、グラフィック、音楽」という4つの表現方法を持つアートプロジェクトとして、「JULIUS」を立ちあげ、勢いそのままに2003年には旗艦店をオープン、2005年SSシーズンから東京コレクションにてランウェイ形式でコレクション発表を開始した。
2008年より「JULIUS MA(ユリウス・エムエー)」というラインでパリコレクションにも参加を果たし、アートと巧みに融合させた作品は高く評価された。
2015年AWシーズンから「NILøS(ニルズ)」という新ブランドを展開し始め、近年では定番や過去の名作に特化した「Permanent (パーマネント)」ラインも展開している。

造形物としての“服”

デザイナーである堀川氏はこのように語っている。
「我々には服はこう作るべきだという先入観がないから、もっと自由に自分たちを表現できるんです。
今でも、自分たちのやっていることを「ファッション」とは考えていないように思う。
ほとんど、彫刻みたいなもの。パターンや形が大切で、彫刻的な考え方が背後にありますね。」
確かにJULIUSの作品を眺めていると、まるで彫刻のようだと感じることが実に多い。
代表的なガスマスクシリーズやプリズムシリーズ、ドレープの効いたカットソーなどである。
立体的でいて有機的な印象を受け、まるで生命を宿しているような印象を持たずにはいられない。

後世のデザイナーに大きな影響を与えたマダム・グレというフランスのデザイナーをご存じだろうか?
彼女は“布と身体の完璧な調和”を目指し、ドレープやプリーツ、構築的なフォルムといった概念を生み出した。
彼女もまた“布の彫刻家”としての異名を持ち、立体的な作風を得意としていた。

しかし、堀川氏とマダム・グレとの間には大きな違いが存在するように思えてならない。
出発点が完全に逆なのである。
マダム・グレが人間の身体ありきの服とするならば、堀川氏は服、すなわち造形物が先行しているように思える。彼の作品には人体の構造を完璧に無視した幾何学的なパターンが多く用いられる。
縦横無尽に走る建築の製図のような直線的な切り替え、ボンテージデザインのような多用なバンド使いなどである。

しかし、JULIUSの服は実際に着用してみると驚くほどしっくりくるのである。
造形物としての側面ももちながら、服としても完結しているのだ。
得てして造形に傾倒した服は着ることが憚れることが多いのだが、ここまでの調和が取れたブランドは他に存在しないのではないか。

  • I am obsessed by the image of “Black” in Japanese Religion , in Zen. It represents the crazy darkness hidden in the shadows away from the light. It is the total color of complete and utter grief.

SFを感じさせる“服”

もう一つJULIUSが持つ魅力はSF的な作風にあるように思える。
“近未来”、“サイバーパンク”、“スチームパンク”等のキーワードで置き換えても良い。
それはアイテムが持つシルエット、ディティール、素材使いまで至る点で見受けられる。
JULIUSの服を目の前にすると自然にワクワクするような高揚感を感じ、作品が置かれたオフィスに筆者が訪れた際には、まるでSF映画に出てくるようなアジトに迷い込んだような錯覚を起こした。

このSF的な作風はデザインの主軸に置いている、「chaos」と「industrial」を具現化した結果である。
世に溢れるようなコスプレとは一線を画す、着ると感情が揺さぶられる服である。
まるでRPGで高性能な装備品を纏ったような、といっても大げさではない。

服の作成のアプローチが一般とは逆を行くブランドが純粋に服は楽しいものだ、というファッションの本質を気づかせてくれる。
「chaos」、今の混沌としてさまざまなファッションジャンル、ブランドが入り乱れている中でファッションの本質を気づかせてくれるJULIUSを手に取ってみてはいかがだろうか?