F606 DIRECTOR'S INTERVIEW
能面採用の理由とは?

早速ですが、なぜLOOKに能面を
採用しようと思ったのでしょうか?

前提としてずっと思っていたことがあって、モデルさんのかっこよさに頼ってブランドの雰囲気作りをするアパレル業界の習慣が気に食わなかったんです(笑)
服のブランドであれば服を主役にして勝負するべきだし、モデルさんのかっこよさを自分に投影して買ってしまう消費者も間違っていると思っていました。

ブランドとイメージが合っていればいいんですが、何でもかんでも海外のモデルさんを採用して雰囲気押ししたもの勝ちみたいなブランドが多いじゃないですか。
消費者は服が気に入ったのではなく、モデルさんが出している空気感を気に入って買っているので「イメージと違う」みたいなことが発生すると思うんです。

F606のコンセプトで“本当の個性”を大事にしているのですが、モデルさんに憧れて買った洋服は“上辺のファッション”そのものだと思います。
だから、LOOKでは顔出し無し、もしくは面をつけたいなと思っていたんです。

そこで、なんとなく能面が合いそうだなと感覚的に興味を引かれて、よくよく調べてみると日本文化らしい奥深さがありました。

その奥深さとはどういうものでしょうか。

能面自体はみなさんよく知っていると思いますが、能面の役割ってご存知でしょうか。

能では“人ならざるもの”を演じるために能面をかけます。
主役、能では「シテ」といいますが、神や鬼、幽霊を演じることが多く、面をかけることで役になりきります。
観客に見せる面、オモテと呼ばれますが、オモテに見せる顔をつけることで、演者はそのウラの暗闇の中に姿を隠し、トランス状態になると言われています。
つまり、誰かの真似をするための面ではなく、シャーマンの祈りの道具のような、演者のスイッチだと解釈しています。

オモテもまた特殊で、よく“能面のような~”と無表情の代名詞のように揶揄されますが、実は無表情ではなく、精緻に設計された“曖昧な表情”なんです。
これによって、同じ面なはずなのに演者の表現力によって悲しくも見えるし嬉しくも見えるという機能を備えています。

俳優や女優などは表情やしぐさ、声色など全身で感情を表現しますが、その感情を読み取る一番大事な要素の“顔”を隠して最大限の感情を表現するという奥深さがとても気に入りました。

その奥深さを表現したかったのでしょうか?

いえ、そういうわけではありません。
ファッションモデルさんにとっても表情というのはとても大事な要素だと思います。
だからこそ、“表情”という表現方法を奪ったらどうなるか興味が沸いたんです。

実際やってみると、表情を奪ったことで体に意識が行くのか、とてもきれいな立ち姿になりました。
ポージングも指先まで神経が通っているように見え、普段とは明らかに違う空気感が出ていました。
まさに服を一番いい状態で見せるための、本当の意味のファッションモデルだと感じましたね。
モデルさんには申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが(笑)

いい誤算だったのが、能面自体のインパクトが強すぎて服の印象を薄くしてしまうのではないかと思っていたのですが、驚くほど馴染んだんですよね。
能面は観客を能に没入させるための面なので馴染んで当然か、と後で納得しましたね。

採用されている能面はこだわりがあるように見えますがどのような面なのでしょうか?

実際に能で使われていた骨董品を使用しています。

特にこだわりを持ったのは“リアルさ”です。
面を結ぶ紐の付け根はこすれて削れており、ウラには実際使用されていたであろう痕跡があります。
オモテも劣化してはがれたり色あせたりしているんですが、表情だけは生きています。

新品や模造品の面を買うのと比べると、面をかけた時のモデルさんの入り方が違うと思ったんですが、これが当たりでした。
なんとも形容しがたいですが、深みが全然違うように思えます。
きっと、面がリアルなことによって、さっき伝えた“能面の役割”を知らずして感じ取ってくれたんだと思います。

表情を削ぎ落としたからこそ、本来の服の本質をより強く伝えられると言うことですね。
正直、能面のインパクトは強かったですが、不思議と服に目がいく理由が分かりました。
ありがとうございました。

こちらこそありがとうございました。

F606 ディレクター