F606 DIRECTOR'S INTERVIEW

この型破りなサイトが
生まれた背景とは?
F606の深層に迫る
ディレクターインタビュー

F606のコンセプトを教えてください。

【ファッションにおける本当の個性は「感情」を刺激し「直感」を促すことで生まれる】
というコンセプトを元に、打算的に売りたいものを売るだけではなく人の心の在り様を写す鏡のようなサービスの提供を目指しています。

なぜそういったコンセプトのショップを作ろうと思ったのでしょうか?

元々弊社は創業時からファッションECを展開している企業でした。
お客さんの顔が見えないオンラインで物を仕入れて売るだけの存在だということはずっと引っかかっていて、オンラインセレクトショップがブランドやお客さんに価値を提供するためには何ができるのだろうかとずっと考えてました。
だけど、きれいごとだけではやっていけないので、今できることの中で試行錯誤しながら、もやもやする日々が続いていたんですよ。
ところが、コロナ禍少し前から急速に消費者の価値観が変化してきたので、「今だ!」と思ったんですよね。

それはどういった価値観の変化ですか?

多様性が叫ばれる文脈の中で、本当の個性ってなんだっけ?という考えが浸透してきています。
トレンドや大衆に踊らされず、自分らしさを主張してもいいんだって世論が形成されてきていますよね。
それに伴って、打算的に売りたいものを売る体制の企業は軒並み力を失ってきていき、逆に、強烈な個性を持つサービスは注目を浴びて支持される世の中になりました。
もう消費者はメディアや広告の打算を見抜く目を持っているんですよね。

こういう世の中のうねりが大きい混乱期って必ず業界の常識を壊すような革命家が現れるじゃないですか。
意図的に仕込んだ革命を作り出すようなつもりは無いですが、長い間練っていた構想を世の中に出すなら今だなと思ったんです。

日本独特の美意識、つまり
「侘び寂び」をベースにした
セレクトをしたいと思ったんです。

モノトーンのみのセレクトショップというのはかなり珍しいように思えますが
なぜモノトーンだけに絞ったのですか?

色っていらなくないですか?(笑)

半分冗談で半分本気なんですけど、アパレルってシーズンカラーとか同型で多色展開するのが当たり前で、そこにトレンドカラーを取り入れるとなおよしって習慣じゃないですか。
そうすると、消費者からしたら「もう流行りの色じゃないから捨てようかな」とか「新しいカラーが出たからまた買わなきゃ」みたいな強迫観念みたいなものが生まれちゃうと思うんですよね。
誤解を恐れず言うと、結局のところ、毎年新しいものを買わせてお金を使わせることが目的になっちゃっていると思います。

そんな目的のカラー展開ならいっそのこと取っ払っちゃえと。(笑)
最近のサステナブルの文脈からも、同意してくれるユーザーが多いですね。

別視点ですが、色って目に最初に入って来る情報なので直感的に違いを感じさせやすいですよね。
「あ、新しいデザインだ」と消費者に思わせることが簡単なんです。
にも拘らず、安易に色を多用せず、白黒メインで勝負するブランドさんって本当にいいものを作ってるブランドさんが多いです。それも白黒に絞った理由の一つです。

侘び寂びの概念とファッションの組み合わせは異質のように思えますがどういう狙いですか?

セレクトショップなので「どういうセレクトをするか」が一番重要じゃないですか。
そこで、日本人が奥底に必ず持っている日本独特の美意識、つまり「侘び寂び」をベースにしたセレクトをしたいと思ったんです。
日本をテーマにしたファッションは多数ありますが、侘び寂びにフォーカスするって盲点だったと思いませんか?(笑)
私は元々寺院とか庭園といった日本文化に興味があって侘び寂びを調べていくうちに、「これってファッションじゃないか?」と思ったことがきっかけです。

侘び寂びがファッションというのはどういうことでしょう?笑

“侘び寂び”というのは、寂びは経年劣化による多様で独特な美しさを指していて、侘びは内面的な豊かさや物事を受け入れる心の在り様を指しています。

侘び寂びというと質素で奥深い日本風の物でしか表現できないように思われますが、侘び寂びを理解する上で大事な要素は“余白”だと思います。
経年劣化の予測できない変化も“余白”ですし、それを捉える人の心も“余白”です。
答えを用意せず考える余白を残すことで、その人の心の在り様によって多種多様な解釈が生まれます。

アートや音楽、ファッションにも大枠で同じ美意識と言うものが存在していると思っています。
例えば、サモトラケのニケ像やミロのヴィーナスがこれほど評価を受けたのは頭や両腕が無かったことが大きいと言われています。想像の余白を残すことで人々は解釈しようと努め、そこに美しさを見出していったのだと思います。
これも侘び寂びの一種だと思っています。
何も日本古来のものだけじゃなくてもいいんですよね。

そういう目線でファッションを見ると、新しい驚きが詰まっていることに気づいたんです。
デザイナーが残した“余白”を切り口に、自分の心の在り様を文字に起こすことで侘び寂びを表現しようと思いました。
やってみると、これが読む人の心を掴むんですよね。
その表現方法で日本人の琴線に触れるような文章が成せたとしたら、今までにない新しい切り口になると思ったんです。

そこまでアイテムに向き合ってもらえるとブランドからしてもありがたいですね。

そうなんですよ。
オンラインショップには卸さないってブランドは非常に多いんですが、流通規制の目的以外にも、アイテムに強い想いをもっているからこそ、ちゃんと伝えられないオンラインショップには卸さないってブランドさんが結構多いんですよね。
これはその通りで、ブランドがアイテムに込めたメッセージを大事にしているのに、伝言ゲームの最後の人(ECショップ)が何もしゃべらないみたいな構造になっているんです。(笑)
こういう想いの強いブランドさんこそほんとにいいものを作っているので何とかしたかったというのもありますね。

個性と信念がカオスに入り混じる
ようなショップにしてきたいと
思っています。

ユーザーにはどのように楽しんでもらいたいですか?

出来れば、誰にも邪魔されない寝る前とかに読み物として楽しんで頂きたいですね。
街に出るショッピングはショッピングを目的にしているのに、WEBサイトのショッピングになると隙間時間に見るじゃないですか。その習慣も変えたいんですよね。
だからこそ、サクッと読めない長文にしています(笑)。
性格悪いですね(笑)。

真面目な話をすると、「感情」を刺激し「直感」を促すというコンセプトなので、頭の中は空っぽにしてもらえればと思います。
それで心が動かなければそういうことなので、次に興味がありそうなところを見て欲しい。
サイトの雰囲気に惹かれて来て頂いたのであれば、ビビッとくるものが必ずあると思っています。
リコメンドとかランキングとか無粋なものは取っ払っているので、余計な先入観が無く見ることができると思います。

これからどのようなショップを目指していくのでしょうか?

分かりやすく言うと、オンライン発のドーバーです。(笑)
セレクトの最高峰なので名前を挙げるのも憚られますが、それくらいの個性と信念がカオスに入り混じるようなショップにしてきたいと思っています。

爆発的に伸ばす戦略なんて用意してなくて、分かる人にわかってもらえれば十分です。
それで共感してくれる人が少しずつ増えていって、ショップも大きくできればなと思っています。

和のテイストと小説ばりの文章という切り口をもっと強くする新しい試みも考えていますので是非楽しみにして頂きたいと思います。

F606 ディレクター